12.12009
大学院FD講演会 長崎大学大学院におけるFDへのとりくみ
高等教育開発センターでは、平成21年9月30日に、長崎大学より橋本健夫副学長(理事・大学教育機能開発センター長)を講師としてお招きし、「大学院FD講演会 長崎大学大学院におけるFDへのとりくみ—失敗から学ぶ—」を開催しました。
講演会は、旦野原キャンパス32号教室と挾間キャンパス211号教室(遠隔授業システムによる配信)を会場として、13時10分より始まりました。講演会に先立って、嘉目克彦理事(教育担当)より挨拶があり、引き続いて司会者より講師の略歴紹介がありました。
講演の内容は以下のとおりです。
長崎大学では、現在、次期の中期計画・中期目標を検討中であるが、そこでは、研究大学としてあり続けることを柱の一つとして掲げている。そのためには、研究者を養成するだけではなく、研究者を支える専門職業人、市民の育成も必要であり、ここに大学教育における教養教育の重要性が位置づけられる。さらに、教養教育は学部だけでなく、大学院教育においても重要視しており、教養教育の充実により、他大学とはひと味違った人材、すなわち「長崎大学ブランド」を育成することが目的である。教養教育は全学で分担しているが、よりよい教養教育を実施するためワーキンググループを組織し検討を始め、1次答申が報告されたところである。
大学院に進学する学生も多様化している。大学院教育についても改革が必要であり、教員のFDだけでなく、職員SDにより、全学で学生教育に取り組まなければならない。 FDの現状については、上手くいっているとは言いがたい。文部科学省によるFDの法制化にあたって、教育の向上という狭義にとらえられがちであるFDの概念を、長崎大学では、次の3つをFD対象としている。「1.教育者としての資質・能力」「2.研究者としての資質能力」「3.管理運営者としての資質能力」である。特に、3については管理者にならなくとも、大学のスタッフとして必要である。1と2については、主として個人の努力に依存し継続性がないので、組織による継承と蓄積のためにもFDが必要である。また、スタッフとして学内で人材を育てることを方針としている。
具体的な「大学院GP」として、平成17年度から平成21年度までの7件が紹介された。
(配布資料、スライド7参照)
- 国際的感染症研究者・専門医養成プログラム
- 医歯薬学による総合研究科で、非常に成果が上がっている。博士課程定員の充足が今後の課題である。
- 海洋環境・資源の回収に寄与する研究者養成
- 環境科学部、水産学部、工学部の連携による研究科であるが、課題が多い。
- 出会い、研鑽、臨床ではぐ食う高度な支援力
- 教職大学院の準備となるプログラムである。教職大学院は1年間から3年間までのカリキュラムを設定し、教員免許を持たない学生も受け入れている。教職大学院は教員の負担は非常に大きいが学生の満足度は高い。
- がんプロフェッショナル養成プラン
- 単独大学によるGPは採択が難しくなり、このGP以降は、大学連携によるプログラムである。
- 新興金融市場分析の専門家養成プログラム
- 国際保健分野特化型の公衆衛生学修士コース
- 国際連携による熱帯感染症専門医の養成
5~7はいずれも、海外の大学と連携し、学生を国外で研修させ、授業等もテレビ会議システムで実施するプログラムである。ほとんどが現地の実習で、世界各地の専門課程の授業をネットで受講する。 新しい組織を立ち上げるのではなく、他大学、外国の協力をカリキュラムに組み込むシステムである。
新たなGP獲得のために、学内でシーズを選考し、漏れたものについては学長裁量経費で手当てし、育成を図っている。GPは予算獲得以外にも学外への広報、特に高校生向けには有効である。
講演の後に質問を受け付けました。
質疑応答
Q1:人間力を育成するための具体的な内容は何か。
A1:人間力という表現は的確でないかもしれないが、基本的にはリベラルアーツを基本としたものの見方や考え方を考えている。要は、知識を身につけるだけでなく使い方についても考えることができるようにすることと考えている。
Q2:学部の教養と大学院の教養についてのレベルの差をどのように考えるのか。
A2:大学院では専門職業人としても人間としても、必要な素養が教養である。人間的な魅力がなければ高度な専門性が活用できないのではないか。また、学部教育による学問的な基礎、専門的な基礎、それを大学院での教養と言ってもいいのではないか。リーダー性の養成についても、大学院での教養と言いたい。
講演会は14時40分に終了しました。参加人数は32人でした。
なお、講演会の後、高等教育開発センターで講師の橋本先生を囲んで意見交換会が行われました。10名の先生方に参加いただきました。お忙しいところをありがとうございました。
[参考]案内ページ
(文責)牧野 治敏
(編集)尾澤 重知
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